佐久間功の『科学的(?)日記帳』

『外来水生生物事典』などの著者が
日々の科学っぽいお話を綴ります。
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続・電気自動車雑感
10月25日に先日のNHKスペシャルの続編が放送されました。今度は日産が発売を予定している電気自動車についての話ですが、まだ発売前でもあり、開発陣の目を通して電気自動車の今を知ってもらうという内容になっていました。

それにしても突っ込みどころ満載。もちろん日産べったりですから、国内で既に電気自動車を販売しているスバルや三菱の話は出ませんし、中国の改造工場は出ても、日本国内で改造してしまった人、コミューターを販売している会社や製造している会社の話はありません。全て海外の話です。

取り上げられた、インドで生産しているというREVAという2〜4名乗りのEVですが、これも前のエントリに書いたように、日本の会社「タケオカ自動車工芸」の企画/開発で、生産コストの点で委託されているものです(語られませんでした)。それもこの回、持ち上げている中国では不十分と判断され、インドに。またこのクルマは衝突安全試験をしていません。日本国内でも買えますが、特例で試験していませんよと車検証に書いてあります。

また中国の電池を大量に積み込んで航続距離を伸ばしたクルマに日産の方が試乗していました。「2トンを越えたらまともに走らない」という予測に反してまぁまぁ走ったかのごとく作られていましたが、見れば分かるほどの剛性不足のボディ。シーンがカットされていましたが、たぶん、曲がり、止まる性能は相当低かったでしょう

走る、走らないというのは加速と巡航のことだけではないのです。そしてこの2トンもある中国車の、曲がりと止まり、ボディ剛性と安全性については、番組の中でいっさい触れられることはありませんでした。
にもかかわらず、これでクルマが語られているように感じてしまう人がいる。それもEVの専門家である先生方にも、そんな方がいる。ということで、個人的にはEV関係者とマスコミの態度(と傲慢と無知)が、結果的にEVの普及を遅らすのではないかと不安に思っています。


最近そういった先生方、知識人=電気自動車の専門家、っていう人は、実は電池とモーターの専門家でしかなくて、自動車とは関係ないような気がしてきました。

そういった方々は、ボディとかサスペンション、タイヤなどなどの研究/学習はしているのでしょうか?しているようには思えません。
それをきちんとやってかないと、耐久性や安全性(回避/衝突の両方)に問題が生じることで「使えないクルマ」の烙印を押されて進歩と普及が遅れるのではないかと懸念してしまうのです。
多くの電気自動車関係者が、自分たちの開発したクルマを語るのに使うのが「加速」「乗り心地」「ハンドル軽い」なのです、実はこれだけしか評価しない、できないのは素人と言われても仕方ありません。

従来のクルマにおいても、加速は大きな出力のエンジンを乗せ、アクセルペダルを緩く、すぐ全開にできるようにすればOKですし、乗り心地はサスペンションではなく、座り心地のいいシートを作れば十分(往々にして長距離は疲れます)。それにパワーアシストが過ぎて地面の感触が全然ない、ただ軽いだけのパワステを付ければ完成です。はっきり言って、こんな安上がりなことはありません
もっとも今まで大手メーカーがそのお手軽さ故に「加速」「乗り心地」「ハンドル軽い」でしか評価できない人向けに作ってきたのも問題なのです。この3点だけ抑えておけば売れてしまうわけですから、売れればそれがスタンダードになる。どんなにまじめに作り込んでもスタンダードでなければ違和感があり、売れない。売れないからユーザーは分からない。まさか大手(=一流、ではないにせよ)メーカーが作っているものが、そんなにひどいとは思わないじゃないですか。むしろ標準と思って当然。結局この悪循環が固定してしまったのです。

まぁ、個人が自分のクルマを選ぶのに、知らなくても大きな問題はないでしょう。自分の財産ですし、自分の生命を乗せて走る自己責任そのものですからね。
しかし、自動車関連経済担当のマスコミ関係者も含めて専門家を名乗るならそういう素人と同じ評価軸しか持っていないんじゃアカンでしょ……と思うのですよね。

ポルシェよりも加速がよかったという某EVもありますが、勝手に目標にしているだけで、ポルシェそのものが発進加速が得意かというとそんなことはありません。またそのポルシェも最新の最高性能のものだったわけでもありません。ポルシェの何が一流たらしめているのか、分かっていないのか、あえて無視しているのか?ある意味失礼ですね。

発進加速ならフルカーボンのフェラーリあたりがライバルでしょうし、さらに一部の日本車はそれをしのぐ加速力を持っていました。
例えば、フルカーボンのシャシを持ったフェラーリF40という化け物マシンがあったのですが、なんと三菱のGTOはそれより速かったのです。しかしこのGTO、「直線の発進加速だけのクルマ」と全く評価されませんでした。要はそういうことです。発進加速なんて自慢になんかなりません

ポルシェと同等と言い張るならニュルブルクリンク・サーキットのタイムトライアルに挑戦して欲しいものです。サーキットとはいえ自然の地形のままに作られたここは、200km/hからのフルブレーキングや、ジャンピングスポットまである、一般道同様の荒れた路面で知られています。でも世界のスポーツカーたちにとってはまさに聖地です。そこへ巡礼していただきたい。そして、そんなところを走る「量産車」という存在を感じていただきたいと思うのです(EVを持ち込まなくてもいいです。たぶんすぐ壊れます)。

また、ヒットしても5年目の車検&モデルチェンジ後に急激にその数を減らす車種もあります。そういうクルマは、ほぼ間違いなくボディがヤレてしまい、乗り心地を含む当初の性能が維持できなくなってしまうような耐久性の問題があって中古車市場に出ないようになっていると考えられます。こういうことも学んでいただきたい。動力系、駆動系は修理できても、ボディは交換できないのです

以上で、電気自動車関係者が「自動車の専門家は我々を相手にしない、けしからん」などと言っているのに、未だにあまりメーカーに相手にしてもらえない、むしろメーカーが自社開発にこだわっているわけが分かっていただけたでしょうか。単純に専門家と思われていないだけなのです。

もちろん私自身、簡便な交通システムとして「バイクよりはマシ」程度のボディを持った電動コミューターは否定しません(むしろ欲しい)が、こういうクルマも含め、EVを現状のクルマと同じ性能を持つようにPRされると問題だなと思います。
| 佐久間功 | 自動車関連 | 20:23 | comments(1) | trackbacks(0) |
書かれていることはそのとおりだと思います。たとえば今のメーカーの最先端の車ですら、街中のあらゆる状況での事故において乗員を守れるとは限らないのですから。一次二次三次安全性をなめてはいけません。もちろん運転する人も。
| そーき | 2009/11/30 3:59 AM |










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